②トピックス 07 今、北極圏がアツい
今、北極圏がアツい
北極圏といえば、人間を容易には寄せ付けない苛烈な自然環境のイメージが強いかと思います。その一方で、近年の地球温暖化の影響もあり、北極海での今冬の結氷面積は過去最少であることが報じられています。その北極圏に今、関係各国が熱い視線を注いでいます。
~ 冷戦の最前線 ~
冷戦の時代、ロシアの極北地域は北極海を挟んで米国と対峙する旧ソ連軍の最前線でした。シベリアの高緯度地域には、米軍の行動を監視するレーダー基地や要撃に飛び立つ戦闘機部隊の基地などが多数配置されていました。北極海の水面下には核ミサイルを搭載したソ連海軍の原子力潜水艦が潜伏し、それをガードする水上艦隊が砕氷艦を伴いながら遊弋していました。しかし、冷戦終結とともにそれらの軍事施設は順次閉鎖され、軍港は北極圏航路を往来する船舶の寄港地としての役割を担うようになりました。
~ 「白熊」が戻ってきた? ~
しかし、北極海航路の可能性や同海域の豊富な地下資源が注目されるようになると、北極圏は再び注目されるようになりました。ロシアは昨年(2014年)12月に「 Northern Joint Strategic Command 」を発足させ、ロシア軍部隊の再配備を進めています。
ロシア海軍は、北極海沿岸の既存の海軍基地(16箇所)に加えて、新規に10箇所の拠点整備を計画しています。冬季の活動に不可欠な砕氷艦については、旧ソ連時代に建造されたものが2020年代には退役予定であることから、原子力型4隻、ディーゼル型3隻の新規建造を決めています。
ロシア陸軍は、南極観測支援業務を通じて得られた知見を活かしつつ、3つの駐屯地に第200狙撃兵連隊及び新規の2個機械化狙撃兵連隊を駐留させるとともに、全地形対応型戦闘輸送車両を配備しつつあります(総員約5千名)。同空軍は、稼働中の6基地に加えて閉鎖中の6基地を再開するとともに、新規の基地建設(含 レーダーサイト)を計画しています。
~ 米・加も対応急ぐ ~
このようなロシアの動きを受け、米国とカナダは高緯度地域の防衛体制の見直しに着手しています。米国、英国、カナダ及びオランダが参加して実施された北極圏・北海での防空訓練では、米空軍がB-52爆撃機を参加させるなど、これまで以上に力を入れる姿勢を示しています。
米国は、アラスカに配備している陸軍部隊の規模や装備の見直しを進めており、ドイツに駐留しているAH-64アパッチ攻撃ヘリ部隊(24機)を同地に移動させる計画を公表しています。米陸軍はまた、アラスカ沿岸の港湾施設整備に関する検討委員会を立ち上げています。
カナダは、極北地域での活動が可能な航空機や車両の調達に本腰を入れていますが、過酷な環境に耐え得る特殊な資機材の開発・製造には時間と経費がかかる見通しです。
~ 北欧各国も活発な動き ~
中立政策をとるスウェーデンでは、緊張が続くウクライナ情勢をふまえ、与野党ともに防衛力強化の政策を掲げています。同国の当該外交・安保に関するスタンスには、ロシア軍がバルト海上空で多数の軍用機を飛行させたり、真偽不詳ながら、スウェーデンの領海内で国籍不明の潜水艇が検知されたりした昨今の情勢も影響しているようです。更に同国内では、ノルウェーやバルト三国といったNATO加盟国やフィンランドとの連携強化を模索しながら、将来のNATO加盟も視野に入れた外交政策について活発な議論が行われています。
隣国のフィンランドも状況は同様で、ロシアが関係強化に向けた秋波を送る中で、中立政策の枠中で隣国スウェーデンやNATOとの関係強化を検討しています。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)では、国防予算増額に加えて、徴兵制の復活を検討する国も現れるなど、緊張が高まっています。